正午なりの時々日記

休眠中ですが、時々ささやきます。

甘い生活

中古DVDで買ったフェデリコ・フェリーニ甘い生活を観ました。学生の頃、名画座で見たときには、"作製された年代を考慮に入れないことには最後まで見通すのはきついな"なんてえらそうな感想を抱いた私。しかし、今改めて見ると、これがびっくりするぐらい良かったです。親の老いや演出された「奇跡」を始め、一つ一つのエピソードが全くもって古びていない。むしろ、今だからこそ新鮮に映るものが多いように思いました。
特に胸をうつのが、主人公(マルチェロ)が全幅の信頼を寄せる親友が、妻を残して子供と無理心中する挿話。自殺の具体的な動機はなく、幸せな中にふと立ち上がる不安に恐怖を抱いたものと読み取れます。一見幸福そうな家族に向かって、夜がおいでおいでをしているみたいで、これは怖いですね。デビッド・リンチ作品でも、突き抜けた天然色の風景の下で、グロテスクな羽虫にカメラズームという、やっぱり晴天の中の恐怖を描いたシーンがあるけど、それに似たものを感じます。
ところで甘い生活では、その後、主人公は自暴自棄になり、例のどんちゃん騒ぎのパーティーシーンになだれこみます。このシーンで、どう見てもやりすぎなマルチェロに私は毎回冷や冷やします。最終的には場は盛り上がりを見せるので、ある意味ほっとするのですが。上述したような不安も恐ろしいけど、お酒もこわいな(?)と思うシーンです。