正午なりの時々日記

休眠中ですが、時々ささやきます。

明日訪ねてくるがいい

マーガレット・ミラーの"明日訪ねてくるがいい"を読みました。行方不明となった前夫探しを老婦人から依頼された新米弁護士。前夫の足跡を追いかけて向かったメキシコにて、捜査線上に浮かんだ関係者達が次々と謎の死を遂げます。やがて事実が少しずつ明らかになるにつれて、人間の裏に潜む見ちゃいけない部分が徐々に明らかになってきます。
そんなあらすじは、失踪事件書かせりゃ右に出る者のいない、ミラー女史の真骨頂。ただし初期中期の諸作品に比べると、緊張感に欠け、ややあっさりしている感は正直あります。最後のオチも途中である程度予想つくし。だけど、いい雰囲気に枯れた筆致からは、これまで以上にクールな感触が伝わってきます。それに台詞回しに溢れるユーモア感覚は、"ミランダ殺し"と並ぶほど秀逸。実際の会話でも是非使いたい、お洒落な台詞で一杯です。使うような状況(失踪事件?)があればの話しですが。
これでマーガレット・ミラーの邦訳作品はすべて読んだことに。あとは初期の未訳出本の内容が気になります。以下は、これまで読んだ中でのベストスリー。
1 まるで天使のような ずば抜けて気に入った作品。最後のショックシーンも凄いです。"Oh, My God"という言葉はこういう時のためにあります。
2 殺す風 展開の読めぬ作品。中心軸のない奇妙なストーリーのため、サプライズ・エンディングも本当に意外なんだかどうだか分からない。そこがいいです。
3 これより先怪物領域 まずタイトルがいい。突出したものは無いけど、読後じわじわとよさが分かる作品。