正午なりの時々日記

休眠中ですが、時々ささやきます。

「火山の下」<「方壷園」+「北京悠々館」

「火山の下」発売されましたね。早速買ってきました。が、「新しい文学シリーズ」から刊行されてた時には、こんなに厚みがありましたっけ。厚みに負けたわけじゃないですが、なかなか読み出すことができず、ついつい、今はまっている陳舜臣の推理ものに逃避してしまう毎日です。

その陳舜臣、魅力はやはり滋味あふれる語り口と、派手さはないもののその発覚方法や伏線などに力を置いたトリックとの融合でしょう。でもそれに加えて、登場する女性陣がほぼ全員美女であるところもポイント高いです(小説なので描写を基に想像するしかないですが)。思えば、男性の登場人物については、シリーズキャラの陶展文こそ悠然としていて女性受けもよさそうだけど、氏が登場しない作品では単なるお人よしとかお坊ちゃんが主役になることが多くて、キャラ的な魅力としてはどうなんだろといった感じです。それに併せて彼らの繰り出す台詞も、陶氏のものとは比べようがないほど凡庸で時折話しの腰を折るほど。陳さん、ちょっと差をつけ過ぎでは。

その一方で主役クラスの女性はみな美女であるのは当然として、描写も生き生きとしており、中でも「玉嶺よ、ふたたび」の映翔や「北京悠々館」の麗映などは実写化あればどなたが演じるのか大変興味深いところです。あと私の一押しは「方壷園」の翠環!短編なので刹那のイメージしか残らないことが逆にその印象を強くしているし、その登場シーンの季節である初春の描写がまるで「春昼」か「春昼後刻」みたく浮世離れしていて、彼女の魅力がさらに倍になっています。「孔雀の道」や「影は崩れた」などはかなり昔にドラマ化されたそうですが、上記の作品群も映像化されないものですかね。