正午なりの時々日記

休眠中ですが、時々ささやきます。

I’m Not Thereを観ました

ディラン・ファンからは今更と言われそうですが、映画"I'm Not There"をようやく観ました。子役や女性を含む多彩な俳優たちが、様々な時代におけるディランをそれぞれ演じるというちょっと変わった作品です。一見、ディランの伝記映画かいなとも思いましたが、彼の音楽やエピソードをモチーフに使って、音楽家の変遷やそれに付随する苦悩を描くことに主眼が置かれている感じです。だから主人公もディラン本人に限りなく近いながらも、あくまで"ディランらしき"人物という趣です。

印象に残ったのが、60年代のディランと思しき人物を描いた箇所においてフェリーニの「8 1/2」を思わせる演出が為されていたこと。そのシーンに限らず、この作品全体のトーンからして「8 1/2」を彷彿とさせるものがあります。フェリーニ作品での映画監督の立場を音楽家に置き換えるとこうなるかなという感じ。特に終幕間際になって、魔術師こそ現れないものの、主人公の死とそれに引き続く魂の救済(再生)が肯定的に描かれるところは結構感動もの。見終わったあとにはさわやかな余韻が残ります。

ところで「8 1/2」の主人公グイドの幼少時代における思い出の呪文「アサ・ニシ・マサ」。これを聞いて、犬神家の家宝「ヨキ・コト・キク」をついつい連想するのは私だけでしょうか?